「我が至上の愛 〜アストレとセラドン」@銀座テアトルシネマ


エリック・ロメール(Éric Rohmer)の最新作「我が至上の愛 アストレとセラドン」を銀座テアトルシネマにて。
88歳の老練が描くのは、ローマ時代の5世紀ガリア地方を舞台に、まだあどけなさの残る男女の初々しい恋物語
草原をわたる風、降りそそぐ鳥のさえずり、揺れる木漏れ日、地が唸るほどの渓谷の水音。少女の透き通る白い肌と恋のときめきで紅潮する頬、青年の陶器のような滑らかな背中、肩に落ちる巻き毛。誤解によって恋人の心を失ってしまったと嘆く彼を、なぐさめ、時に諭す、村の僧侶の分別と悪ふざけのユーモア。ロメールは、目に見えるものも見えないものも、穏やかさも荒々しさも、人も自然も、すべては等価にうつくしいということをあますことなく表現する。ロメールの作品を観ることは、いつも「瑞々しい」としか形容しようのない、独特の美の概念をシャワーのように浴びる至福の体験。とくに今作は、いつものように恋愛のすれ違いを主軸としながら、人々と取り巻く自然を原初的に描くことにより、存在の神々しさに触れんとするところまで昇華させている。
まるで登場人物たちに混ざって森の小道を歩いているような気分になり、映画の中へ引き込まれる。本来、人は母なる大地に抱かれ、その大きなゆりかごの中で安心して、友と過ごし恋に落ち、日々の営みを送るものだったのだなぁ。いつからそれをコントロールできるなどと過信してしまったのだろう。自分たちの都合で破壊してしまったせいで、そのふところに身を委ねることも、我もその一部であるという実感も感じ難くなり、いつもひたひたと不安に苛まれているわたしたち。その日常に耐えきれなくなったときは「リゾート」と称する人工的な自然を、金を使って消費しなければならない。
『原作を忠実に再現するために小説で描かれた地域を撮影場所としたかったが、高速道路や都市化が進んでいたため願いが叶わなかった』と、映画の冒頭でテロップを流す監督は、エコ!なんてひとことも言わずに、人々の幸せのために自然美はなくてはならないし、環境は、人間が「守ってやる」ものではなく、その恩恵を受ける者が感謝し敬うものなのだということを教える。
春の嵐が吹き荒れた翌朝の空は輝きを増し、散歩の途中で出会った桃(もう、こんなに咲いてる〜)のピンクを引き立てていた。

我が至上の愛アストレとセラドン」公式サイト
http://www.alcine-terran.com/wagaai/





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