トランスヒューマンの増殖

21世紀の歴史――未来の人類から見た世界

21世紀の歴史――未来の人類から見た世界

こどもの日の朝、TVでのインタビューに答えるジャック・アタリ(Jacques Attali)の話に思わず引き込まれ、さっそく図書館で借りた本。『未来の人類から見た世界』というサブタイトルが示すように、2050年、2100年の世界はどうなっているかという大胆な予測が展開する。 ヨーロッパ最高の知性と言われる彼の著書に感銘を受け、「サルコジ大統領は“21世紀フランス”変革のための仏大統領諮問委員会「アタリ政策委員会」を設置した」そうです、余談だけど。
テクノロジーグローバル化が進み、国家間の安定が崩れ去り、戦争や紛争を超えた<超紛争>が起こって無秩序に混乱する世界は、やがて民主主義を超える<超民主主義>の時代を迎える...って、まだ読んでない方にはなんのこっちゃですね、まるでSF小説を読むような内容は、キャッチーで刺激的。
予言の書として当たるか否かというよりも、豊かな知見から昇華したヴィジョンに、ボヤーとしたこちらの頭が目覚めるかんじが楽しい。中でも面白かったのは「新たな歴史の担い手たち」として、超民主主義世界に出現し増殖していく<トランスヒューマン>なる人々について。『愛他主義者であり、世界市民である彼らの活動により、地球規模の制度・機構が誕生し、産業は軌道修正され』彼らは『新たな豊かさの秩序を誕生させて』いくのだそうだ。

希少性の世界、つまり市場において他者とは、ライバル(希少な財をめぐって論争する敵、自分の自由を構築する際の敵対者、一切の知識を共有し合ってはならない相手)である一方、トランスヒューマンにとって他者とは、自分自身の存在の証であり、孤独でないことを確認する手段である。(中略)トランスヒューマンは、全員が競争し合う市場経済と平行して愛他主義経済を作り出す。愛他主義経済とは、無料奉仕、お互いの寄付行為、公共サービス、公益からなる経済である。筆者はこれを調和重視と呼ぶが、調和重視が希少性の法則に縛られることはない。つまり、知識を与えることは知識を失うことではないのと同様である。(中略)各自はこうしたサービスを他者に供給することを快く思い、敬意、感謝の念、共に楽しむことなどが金銭的報酬に取って代わる。こうしてサービスの希少性は失われる。というのは、人は多く与えることで、多く受け取ることになり、多く与えることで与える欲求と財力も増すからである。調和重視においては労働さえも拘束のない喜びとなる

トランスヒューマンはすでに現代にも存在し始めていて、<調和重視企業>で活躍しているという。

調和重視企業には新たな職種も誕生し、与えることの喜びから生まれる新たな労働観が発展していく。すなわち、他者の笑顔や文化を伝承することに喜びを見出し、他者の痛みを和らげ、慰めたりする喜びである。こうして調和重視企業が一丸となって新たな経済を構成していく。

そういえば、アタリ氏の論調に対しTVのインタビュアーが「そうはいっても<調和重視>の実現はなかなか難しいですよね」とかいうことを述べると、すかさず彼はそれを否定し、こう答えていた「どうしてですか?私はすでにその企業を経営していますよ」
アタリ氏は、アフリカでマイクロファイナンスを行うNPO「プラネットファイナンス」を1998年に設立している。マイクロファイナンス→小規模金融。発展途上国で小口の融資などを提供して人々の生活を支援し、彼らが自立し貧困から抜け出すことを目指した金融サービスのこと)現代のトランスヒューマンは「そんなことできるわけない」というネガティヴな停滞を、いとも軽やかに飛び越え、「きみもトランスヒューマンになれるよ」と誘っているよう。



プラネットファイナンスジャパン 公式サイト
http://www.planetfinance.or.jp/





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