『ブッダのサイコセラピー』マーク・エプスタイン著

ブッダのサイコセラピー―心理療法と“空”の出会い

ブッダのサイコセラピー―心理療法と“空”の出会い

N.Y.でサイコセラピーと瞑想を行うエプスタイン博士が「ブッダの教えを西洋心理学の洞察と調和させようとして努力してきた成果」というこの本には、ページを繰るたびに様々な発見がある。
「西洋的な経験に特有な、自己疎外による渇望と痛みという苦悩に取り組むために準備された」心理療法が、長い年月をかけて洗練されていくにつれ、仏教思想との類似点が明らかになってきたと指摘する著者は、「心理療法は、精神分析の方法を応用することによって苦悩の原因を特定し、明らかにすることはできても、それを容易に治療する方法を開発できずにいる」ので、分析に終わりが来ない、そこでブッダの教える瞑想が解決の道を示すという。純粋な注意をもって自己の感情を見つめる瞑想の戦略は、自己を誤解する根拠となる、怒り、恐怖、自分勝手な欲望といった手強い感情や、痛みに添い、それを緩和する。自分が同一化している感情を知り、向き合うための心理療法と、実際の救済を約束する瞑想は、現代に生きる者たちにとって両方必要なのだと。
とらわれ、同一化し、自覚できないままパターン行動をくりかえしてしまうエンジンとなっている感情。その記憶を呼び起こし、原因を特定できたとしても、過去に起こったつらい出来事は現実だし、それを変えることもできない。受けた心の傷や、身体に残滓として刻まれる痛みそのものは消すことができない。できるのは瞑想によってその痛みと共にいることを学び、それを和らげ、自分の側がものの見方を変えることだけだというところでは、心の中の強固なモノが一瞬で崩れる感覚があり、ハッとした。ネガティブな感情をつぶさに調べ上げ、その原因となった出来事を突き止めれば、心の中に置いておきたくない感情や痛みはひとつひとつリリースされ、いずれはすべて消し去ることができるのではないかと、うすうす期待していたことに気づいたからだ。
坐禅会での老師の言葉を思い出す。「すべては空である。悟りたいと思う心もまた欲である。さあ呼吸とひとつになって坐りましょう」




ブログランキングに参加しています。

おいしそう、ヘルシー!って思ったら、クリックしてね (^-)

にほんブログ村 料理ブログ 健康食へ