『Rescue Dawn 戦場からの脱出』ベルナー・ヘルツォーク監督@DVD

日本では劇場未公開のままDVDリリースの作品。ヘルツォーク監督がハリウッドでベトナム戦争ものを撮るという意外な組み合わせに「やっぱりジャングルを撮らせるなら彼というので、指名が!?」と思ったが、97年に同じ題材のドキュメンタリーを撮っているそうです、満を持しての映画化だったわけだ。
墜落事故で捕虜となった米軍パイロットが、苦難の果てに奇跡の帰還をする実話がベースになったストーリー。オープニングはうつくしい質感の空撮シーン。すでにヘルツォーク節は全開。スゴかった、全編を貫く緊迫感。
50年代の米国でスクスクと育ったであろう気の良い若者が、突然極限状態に置かれ、ジャングルをさまよううちに、狂気に触れるほどの体験をする。これをサバイバル劇として観ることもできるが、わたしは戦争の悲惨と無益を淡々と描く監督の、普遍的なメッセージとヒューマニティに心を打たれた。
舞台となった65年当時、ベトナム戦争があれほどまでに泥沼化すると想像した米国人はいなかったろう。主人公も、任務は訓練通りに行われてほどなく帰還すると思っていたに違いない。一体何が起こっているのかという主人公の戸惑いや疑問、先に捕虜となっていた仲間たちの、長い収容所生活によって奪われてしまった気力や希望、戦争に巻き込まれ、看守として駆り出されていたラオスの人々の恐怖。敵も味方も区別なく、彼らのリアリティに目を背けることなしに描かれる緻密な演出。それを望んだ者はひとりもいない。戦争って何のために誰がするのか。
レビューでは捕虜役の俳優陣が、おそらく10kg越えの減量をしたことが話題になったようだが、骨と皮に痩せこけ、さまよい歩く捕虜、筋骨隆々で贅肉のかけらもないベトナムの男たち、豊かさを象徴して肉付きのよい米国兵の対比は、台詞もないシーンの、ただ映し出される彼らの姿だけで、あらゆる雄弁さをもって語られる。ここまで細部にわたって明晰に演出しようという監督と対峙するためには、どんなに辛かろうと減量しないわけにはいかなかったでしょう、ああ大変だ。




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