『My Back Pages ある60年代の物語』川本 三郎著

マイ・バック・ページ - ある60年代の物語

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この本が映画化されるそうで、目に留まった。
もともとは『SWITCH』へ連載(1986〜1987)されたものが翌年に単行本化、映画化をキッカケに、このたび新装版刊行となったらしい。この雑誌を毎号読んでいたのが、ちょうどその頃だったので(この連載は覚えがないから、きっとその直後くらいから買ってたのかも)懐かしさも手伝って読み始め、一気に読了。
著者の、洒脱で、控えめというか、ときどきちょっと人ごとみたいに突き放しているような、感情過多ではない文章が好きで、巷で見つければ、内容はチェックせず、まずは手にとり、読む。
単なる個人的な好みだが、他の、オジさま世代による、映画や音楽にまつわるエッセイや評論はどうも苦手。過剰にセンチメンタルか、根拠のよく分からない上から目線の、威圧的なトーンのことが多くて、読んでいる途中から、映画の話なのか、オレ自慢なのかがよくわからなくなってくる。
さて、物語は、60年代に青春を過ごした著者の記者時代の思い出を、当時のカウンターカルチャーを織り交ぜて語るところから始まり、いつものカラーを楽しみながら読んでいたのだが、後半は思わぬ成り行きに進んで行く。
途端に、話のスピードは落ち、著者の怖れや苦しみ、逡巡、後悔を行ったり来たりしながら、ようやく前に進んで行くような感じになる。このじれったさに対して、辛口のコメントをするレビューも多いようだが、わたしは、このある種の決められなさ感が、若さとか、きっとあの時代とか(体験していないので想像の範囲だが)、そのものを表しているように思えた。繊細なのだけれど、湿ってなくて、独特の抑えた文体が完成して行く理由のひとつは、もしかしたらここにあったのかということも、はじめて知った。
著者のあとがきによると、出版当時、丸谷才一氏が『比類ない青春の書』と評したそうですね。その次の一文を見て思わず唸った。『どう見ても愚行と失敗の記録であって、それゆえ文学的だ』そうです、その通り。ゴチャゴチャ言ってすみません。

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