村上春樹 スピーチ「非現実的な夢想家として」ノーカット版
カタルーニャ国際賞を受賞した村上春樹氏が、9日、バルセロナの自治州政府庁舎で受賞スピーチを行った、その全映像。
TVやネットの記事では、短く編集されたVTRが流れたけれど、ノーカットのスピーチを、ぜひみんなでシェアしたいと思ってエントリーします。
インタヴュー嫌いとして広く知られ、ほとんどマスコミの取材も受けない氏の姿を、こうしてTVで観ることなど、今までだったらとうてい考えられなかった。それだけに、どういう決意のもと、このメッセージが発せられたかということを、決してなめらかではない話し振りを聞きながら、その重さ、深さについて考える。
報道では、各社一斉「原発批判のスピーチ」という見出しと共に、センセーショナルに取り上げられたが、世界的に高名な作家が「反原発」の立場を表明した!という二者択一的な結論へ、自動的に反応してはいけない。そういった思考停止をこそ、彼は批判しているのであって、わたしたちひとりひとりが考え、選択し、行動へ移さなければならない、そこにしか答えはないということを繰り返し発言しているとわたしは感じた。
あまりにも大きな過ちを前に、たじろぐわたしたちは、どうやっても他に生き延びる道のないことは明らかなのに、果たしてそんなことができるのか、再び正しい道へ戻れるかどうかということさえも、疑い、心が揺らいでしまっている。でも、少なくとも夢見ることはできるし、それは罪ではない。
みんなでそれを信じよう。「非現実的な夢想家」になろう。そのひとりひとりの想いが、必ずわたしたちを正しい道へ導いてくれるのだからと、氏の訥々とした語り口に、温かく励まされているようだった。