冬の味覚 ぶり大根


ピューッと木枯らし吹く午後。魚屋さんの店先には、堂々たる墨字が踊っている。「天然 鰤」はい、いただきっ^^
つぎに寄った八百屋さんでは、地元農家さんのピカピカした大根を。そう、この組み合わせは、冬の味覚ぶり大根。脂がノって見るからに美味しそうな鰤につられて、思わず買ってきてから気づいたのは、ぶり大根をつくるのもそういえば1年振りだったかしらということでした。コトコト味を含ませる献立って、忙しいとなかなか手が出ない。ちゃっちゃと炒めたり、オーヴンへ放り込んででき上がる方をつい選んでしまう。

冬の凍えるような寒い日、母はいつもストーブの上のヤカンを載せるところに鍋を据え、煮炊きをしていた。八頭の含め煮だったり、ぶり大根だったり、お汁粉だったり。学校から帰ってドアを開けると、キッチンから漂う香りが、その日のおやつと夕食をジャジャーンと予告する。それが好物なら、思わずニコリ^^
ストーブのとろ火が、煮物にはちょうど具合がいいからと、それが母の気に入りで、エアコンやファンヒーターや、床暖房や、いろいろ便利な暖房器具が登場しても、母の台所にはあの昔ながらの四角いストーブが今も定位置からなくなることはない。
ぶり大根は、熱湯を回しかけて臭みを抜いた鰤を大根と一気に炊き上げ、アッサリと炊いた鰤と旨味を吸った大根の軽やかな炊き合わせを楽しむのもいいし、幾度も火から降ろしてはまた温めて、じんわり煮含めた大根の、ほろりと崩れんばかり、向こう側が透けて見えるのではないかというほどにつややかなアメ色になったのを、箸でつつきながらいただくのも嬉しい。じっさいその頃にはもう、鰤は旨味をすべて出しきっていて、人気があるのはもっぱら大根ばかりということになるのだけれど。
日々忙しなさが増していく現代生活では、日中いつも家を守って、のんびり鍋の世話をする主婦や、お母さんというのはもうイマドキないのかもしれない。でも、2日目くらいの、味がしみしみになった大根を口へ運ぶとき「こういうことが無理なくできる生活のペースを、自分自身でつくらなくちゃイカンなぁ」と深くココロに思うのでした。まぁたまにだけれども。

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