『牛の鈴音』@銀座シネパトス


韓国で300万人を動員したという映画を観に銀座へ。
農村で暮らす老夫婦と年老いた農耕牛の日常を追ったドキュメンタリーは、ナレーションもなく、音楽も最小限にとどめられ、静かでスローな映像が続く。

おじいさんの思想はシンプルだ。畑に農薬を撒かないのは「牛の食べる草が毒になるから」市販の飼料をやらないのは「高カロリーの調合餌では牛が太ってしまい、良い子を生まなくなるから」(おじいさんは畑仕事の他にも、牛の食事のために毎日大量の草刈りをする) 彼は環境保護の活動家でもなく、有機農法を広めるカリスマでもない。ただ、9人の子と孫たちに送る米や野菜の畑には農薬を使わないと、心に決めているだけ。それは、効率という名の宗教に身を捧げるわたしたちが、なにより恐れている暮らし方でもある。
農村の四季折々や、風の音、鳥の声、せせらぎなどが印象的なこの映画は、じつは自然回帰や、田園礼賛ではなく、愛の物語だ。年老いた牛の体調を気遣うとき、おばあさんの小言をだまって聞き流すとき、お盆に帰って来た子供たちとの賑やかな宴のとき。愛する対象を見つめる、おじいさんのまなざしは、なんと深く、うつくしい。
たとえ都会で忙しい毎日を暮らしていても、自分の欲望を満たそうとしゃかりきになる時間を少しだけ止め、家族や友人といった身近な存在へちゃんと関心を向け、その幸せを阻むことへは間接的にでも加担しないようにする、もしかしたら日々の暮らしのそういう積み重ねで、状況はなんとかよくなっていくかもしれない、そんな風に思わせてくれる映画だった。

牛の鈴音 公式サイト
http://www.cine.co.jp/ushinosuzuoto/





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