『オーケストラ!』@DVD

オーケストラ! [Blu-ray]

オーケストラ! [Blu-ray]

いやー、素晴らしかった! 今年のNo.1かも。
ハラハラ、ドキドキの展開に水を差すので、ネタばれ厳禁。詳しいストーリーは明かせないけれど、ロシアの共産党政権下で職を追われた、ユダヤ系音楽家たちが、一発逆転のチャンスに賭けるというドラマ。エンディングのチャイコフスキー『ヴァイオリン協奏曲』ノーカット、フル演奏は、それだけでも観る価値ありです。
全編を貫くユーモアのセンスが、ものすごくツボだった。絶望の淵にいるとき、生きて行くために人が最も必要とするものは、ユーモアに他ならないということをビシビシ伝えて来て、大好きな作家のミラン・クンデラを想い起こさせる。
悪趣味までギリギリというところの喜劇にお腹を抱えて笑いつつも(いったい何回爆笑したことか!)通奏低音としてひたひたと流れ続ける、怒りや憤り、何人も他人の自由を奪ってはならないのだという強いメッセージを重く受け止める。この複雑で知的な表現センス!
あまりにもドラマティックな成り行きが、少々安直で、リアリティに欠けるのでは?という批評もあるようだが、監督は敢えてこのスタイルを選んだという気がしてならない。この素晴らしいファンタジーを観終えた後、世界を振り向いてみれば、現実には心の痛いことばかりが起きていて、わたしたちが本当に自由を得られる日はいつか来るかしら?と、ため息が出てしまう。けれど、だからこそこうしてひとときの夢を見て(観て)、自由の大切さにいつも目覚めていようという、希望と祈りを感じるからだ。


帝王ヤッシャ・ハイフェッツ(Jascha Heifetz)の演奏を見つけたので、こちらもどうぞ。『カーネギーホール』(1947年米映画)


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