『狂人の太鼓』リンド・ウォード(Lynd Ward)著

狂人の太鼓

狂人の太鼓

面白い本に出会った。木版画120点だけで構成された、文字をまったく持たない小説。

片面に刷られた版画だけが続く
ページを繰りながら、ストーリーを想像していき、どんな内容なのかは読む者に委ねられるのだが、知らぬ間につい夢中になってしまう。文字を追い、イメージの広がりを楽しむという、小説を読むいつもの行為と逆のことが起きるからだ。
いや、まったく逆っていうわけでもないかな、文字のある小説を読むとき(←なんか妙な説明ね)と同じように(それ以上に)ものすごく想像力を駆使するし。それから、人にもよるとは思うけれど、わたしの場合は、この本を眺め、ストーリーを頭の中で展開していくときに、明確な言語化というか、文章そのものを思い浮かべるやり方で進まなかった。もっと、未知の、感じたことのない知覚の領域に触れちゃった!というような衝撃だった。
まるで質の良いタロットカードと戯れるときのように、想像をかき立てられる世界。風景、象徴、意識、自我、そして洞察を巡る旅。
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