「流れている川に文字を刻まないで、岩に刻め」

アウトレイジ [DVD]

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息もできない [DVD]

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バイオレンス映画を2本続けてDVDで。
キタノブルーの美しさ、スタイリッシュな構成、渦巻く暴力と死の中に一瞬だけ現れる生の愛おしさ、久々に帰って来た北野節を存分に満喫しつつも、それを圧するほどだったのは、韓国インディーズ映画の『息もできない』
ヤン・イクチュン監督はこれが長編デビュー作だそうだ。
観終わって、脚本、監督、主演、製作、編集、ポストプロダクションまで、すべて彼の手によることを知り(途中で製作資金が無くなり、家を売って完成までこぎつけたとか)驚くと同時に、そうでなければ、これは生み出されなかった作品だったのだと思う。まさに彼の個人的な、内なるエネルギーそのものが、この映画には叩きつけられている。
現代韓国の家族の在り方とか、戦争の残した傷とか、父権についての議論やDV、虐待、家庭崩壊など、いかにも社会学的分析の格好のネタとなりそうな「衝撃の問題作」ではあるのだが、この映画の逃れようのないリアリティを前にして、そんなものは、きっとあっさりと吹き飛んでしまう。
「俳優としてキャリアを積んできたので、自分の中にある、言いたいことを吐き出そうと思ったら、自然と映画という形になった」とインタビューに答えるヤン監督は、賞を総ナメにし、依頼が殺到している今ではあるけれど、撮りたいものが満ちるまで次回作を撮る気はないらしい。
「言いたいことがあるから、映画を撮る」っていうのは、普通に考えれば無謀かもしれないけれど、この映画を見れば、自分の中の創造性に対して、いつもブレーキをかけ、水を差すのは、他ならぬ自分自身だなと痛感する。「できっこない」「そんなの無理」「自信ない」
本当にしたいこと、しなくちゃならないことが芽生えて、思わず走り出すときは、そんなネガティヴなことを考える暇もない。

ホウ・シャオシェンの言葉があって、「流れている川に文字を刻まないで、岩に刻め」、つまり、すぐに行動に移せ、川に流してしまったら残らないから、行動に移せってことをおっしゃっていたんです。その一言で影響を受けて、悩まずに自分を一歩踏み出してみようと思い、映画を撮ろうということになったんです。
ヤン・イクチュン インタビュー/OUTSIDE IN TOKYO
http://www.outsideintokyo.jp/j/interview/yangik-jun/


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