ホタル舞う、田んぼ


いつもの坐禅会の帰り「こんな風に蒸し暑い日は、ホタルがたくさん飛ぶよ」って話を耳にした。
「え!? 葉山でホタルが見られるの?」さっそく教えられた場所を訪ねる。ごく普通の住宅地の小道を抜け「どこに田んぼがあるのかしら...」すると、突然視界がさっと開け、目の前に広がる棚田。段々に高さの続く田んぼは、両の山々がつくるちいさな谷に守られ、しんとした静けさを漂よわせている。一瞬、現代ということを忘れてしまいそうな、いにしえの眺め。
葉山でお米を作っている方々がいるというウワサは聞いたことがあったけれど、こんなにご近所だったなんて。
田んぼではちょうど作業中。話を伺うと、長い間米づくりをやめてしまっていた田んぼを、お仲間と借りてもう10年も有機栽培でお米をつくっているそうです。
「冬期湛水・不耕起栽培(とうきたんすい・ふこうきさいばい)」という、その農法は、冬の間も田んぼに水を入れ(従来農法では作業をし易くするために冬期は水を抜く)年中湿地状態になっているので土中の微生物やイトミミズ、魚類などが生育し、さらにそれを補食する鳥たちもやってくるとか。もちろん農薬も、肥料さえ施さないという田んぼは、自然の生態系がそのまま。水がきれいなところしか決して住処にしないホタルが飛び交うのはその証。

田植えを終えたばかりの苗の間には、アメンボやおたまじゃくし。

さて、夕暮れ時。期待に胸を膨らませてふたたび田んぼへ向かう。
山並みの稜線が群青色に染まり、だんだん夜が近づいてくる。ほとんど足下も見えなくなる暗闇で(街灯なんてないから、真っ暗です)、いきなり瞬く光をぽつんと見つける。「あ!ホタルっっ!!」と草陰に丸い光をみつけて近づく。ほどなく隣にもまたひとつ。「意外と明るい光だね」「大きくなったり小さくなったりするね」しゃがみこみ、夢中で観察する。
「ほら、ごらんよ」と、連れに促されて立ち上がれば、辺り一面に輝く光、光、光! 数百匹の蛍が舞う様は、まるでクリスマスのイルミネーションみたいだ。うわー、なんて幻想的。ときおりざーっと風が谷戸を渡れば、ホタルはそれに乗って高く飛び交う。木々の梢にとまったホタルが風に揺れ、光もいっしょに揺れる。

いつか子供の頃に見たきりの、こんな風景に出会えるとは、もう思っていなかった。でも、どこにでもあるわけじゃないのよね。ここは谷戸に守られた、特別な桃源郷なのかも。。と思っていたら、この冬期湛水不耕起栽培法は、各地でどんどん広がりつつあるそう。仕掛人は岩澤信夫氏。田んぼを耕さないので耕うん機不要、電気もガソリンも必要ないこの自然農法は21世紀にこそふさわしいスタイルと、普及に力を注いでいるそうです。


日本不耕起栽培普及会 公式サイト
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/1757/
田んぼ博士の応援隊
http://www.tanbohakase.com/





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